「ロバート・アルドリッチの現代性」
吉田広明(映画批評家)
チャップリンやロージー、フライシャーの助監督を務めながら、B級映画を何本も撮ることで修行する経験を積むにはほんの少し遅かった世代に属するロバート・アルドリッチは、ハリウッドの生んだ初めての現代的監督である。アルドリッチは西部劇やアクションなど数々の古典期的なジャンル映画を撮っているが、しかしその画面やドラマツルギーには、古典性を踏み越えた、明らかな現代性が刻みこまれている。しかもその現代性は、古典の革新にとどまらず、今の眼から見ればポスト・モダンにまで達しているようでもある。アルドリッチにおける古典性と現代性の相克をたどりつつ、その現代性が今にまで有する射程と、それが持つある種の限界を明らかにしたい。