第6回「映画における演技はなぜ音楽への愛を隠そうともしないのか? なぜみずから音楽たらんと欲するのか?」

映画を観ている時、この監督は現場で眼を閉じ、演技を“聞いて”いたのではないかと感じる瞬間がある。その代表例が増村保造監督の諸作、特に大映倒産後の低予算時代の作品群である。そこでの俳優たちの演技は明らかにひとつのリズム、ひとつの“節”となることを目指している。彼らはいったいなぜ、どうしてこんなことをしているのか。増村保造監督の傑作『曽根崎心中』を手がかりに、映画における演技と音楽との繋がりについて考察する。(塩田明彦)