第1回「成瀬巳喜男はなぜこんな風に俳優たちを動かしたのか?」 人生の断片をスクリーン上に創り出すため、成瀬巳喜男監督はなぜこのような舞台装置を選び、なぜこのように高峰秀子や加山雄三を動かしたのか。その動線の設計にはどのような狙いがあったのか。なぜそのような動線上の動きが彼らの芝居を魅力的なものとするのか。かつての巨匠の発想の根っこにある演出と演技の狙いを代表作『乱れる』を中心に考察する。成瀬巳喜男の想像力、それはまた映画的な想像力そのものの根幹であるのかもしれない。(塩田昭彦)